彼が敵に回ったのはいつのことだったんだろう。
上半身に絡まっていた腕はいつの間にかほどけてしまったようだ。その手を離さなければ。そんな思いが何度もよぎる。
刀の切っ先をこちらに向けて立つその瞳には一分の迷いも隙も、躊躇も無かった。その姿は鋭い痛みになって突き刺さる。
どうして。あんなにも楽しかったのは夢か幻か。君が隣にいるだけでも満たされた気持ちになれたのに。それが偽りだったとは思えない。思いたくなんか、ない。
「敵になった以上、容赦はしません。もちろんいくら、親しかったとしても。」
関係性など、問題ではない。
彼はそう言い放つ。
「俺は」
それでも、
「お前が無事であることを、願ってるよ」>
そんな精一杯の強がりに、君の瞳が揺らぐのが見えた。
今すぐに近寄って抱き締めたい衝動にかられる。しかし、彼との間には鈍く光る刃が存在していて。
「 来 な い で 」
涙は流れない。ただ、心が悲鳴をあげていた。
090406