自分が意地を張っていることにふと疑問を持ったのはつい最近。別に大したことなかったはずのズレは意地っ張りのせいで更に開いてしまったのかもしれない。そう思い出すとなんだか無性に申し訳無い気分になった。うん、ごめん。心の中だけで呟いた。だけど、この気持ちを伝えることは一生無いだろうと俺はなんとなく思った。



「なぁ、なんで俺の料理は誰の口にも合わないんだよ」
「お前の味覚に問題があるんだからしょうがないだろ。」
「……、」
なんでフランスは俺の料理に付き合ってるんだろう。あんなにも退屈そうにするのならばさっさと立ち去ればいいものを。どうしたって、そこにいるのを気にしないことができない。大勢でいないときはどうしても申し訳なさが先に立って空回りする気がする。普段通りを意識するほど、どうしようもなくすがりついてしまいたくなる衝動に襲われる。
「あぁっ!!クソッ、」
「ちゃんと食べ物作れよー」
「当たり前だ!!バカにしやがって、」
食べられないものを作ってるつもりは無いのだ。ただ、味覚がずれてるだけ。
「こんなんじゃ駄目だ、またアメリカに笑われる。それに、」

せっかく待ってる人がいると言うのに。

だって、俺が作るのを退屈そうに待ってるんだ。どうせ上手く作れるとは思ってないだろうけれど。感謝の言葉は恥ずかしすぎるからせめて、せめて少しでも彼の舌に適うものを。それがたとえ伝わらなくとも、精一杯の誠意をこめて。 自己満足だってことには気づいてる。わかってるさ。でもそれでも良いって思った。



「オイ、フランス。出来たぞ!!」
本当に退屈そうな顔。否、退屈と言うよりも明後日の方向を見てる。
「オムレツと野菜スープだ。」
オムレツは自信がある。問題は野菜スープだ、こればっかりは自分を信じるしかない。
「それはほんとに食べられるのか?」
多分、と言いたくなった。否、材料が食べられるんだから食えないはずがない!!
「感謝しやがれ、一口目を食わせてやろう」
「食べたあとに無事生還できたら感謝してやらないこともないな。」
人の気持ちも知らないで。そんなことばっかり言いやがる。
「いいから食え!!」
少しだけフランスが笑った気がした。フランスは何を思ってこの料理を食べるんだろうと考えたらなんだか気恥ずかしくなった。
さて、彼はなんて言うだろうか。





090304


サークルのほうにフランス視点ヴァージョンがありますのでよかったらどうぞ。